調理場の中の話で恐縮なのですが。
お客様が玄関に入られた右手の壁(大きな絵馬の額を飾っているあたり)の裏側には、大きな木の棚が取り付けてあります。
下の写真をご覧いただくと分かるのですが、かなり年季の入った木棚。
これはさかな家建築中に、丸安魚店に取り付けてあったものを移設したもの。
現在の丸安魚店のお店(兼店舗)が建てられたのは、さかな家店主が今の娘くらい歳の頃だったそうですから、木棚はもう30年以上も働き続けてくれていることになります。
それを今回一部改装(というのか何なのか)することになりました。
当店のメンテナンス担当は、さかな家店主の叔父。
さかな家を経ててくれた、大工の棟梁です。
収納が少ない当店の調理場において、この木棚の収容量は貴重。
だから、棚自体は小さくすることなく、底面部分の化粧板と足の部分を少し切るようにお願いしました。
実は新たにあるものを設置することとなり、その準備のためです。
「こういう機械を入れたいんだけど、ここがこのくらい高さが必要だから、切ってもらいたい」という、超アバウトなさかな家店主からのオーダーにも「はいよ」とひとこと、さっそく作業に取り掛かってくれるのでした。
思えば、丸安からさかな家の厨房にこの木棚を取り付ける時にも、少し長すぎるということで棚そのものを切って短くしてくれた叔父。
(はめ込んでいるガラス戸は当時のままなので、実はピッタリきれいに戸が閉まりません・苦笑)
木のいいところは、形が変えられるところ。丸安にあったときは、配達用の刺身皿などがぎっしり並べられ、今はグラスを並べています。
時の流れに合わせて、使い方に合わせてアレンジできるって、当たり前のようだけど、なかなかほかの素材ではこうはいかないなあと思いながら眺めていました。
釘が出てきたら裏からたたいて頭を出して引き抜いたり、左右に振ってぽっきり折ったり。
固くて太い鉄の釘も、トンカントンカン、叔父の手にかかると飴細工のように柔らかく見え、自由自在に向きを替えたり抜いたり、切った(折ったり)できるのでした。
「長年木の中に入っていたから、本当にもろく柔らかくなっちゃったんじゃないの?」と触ってみましたが、当然そんなわけもなく(笑)
職人技ってすごいな、と改めて思いながら作業を眺めていました。
叔父の使っていたノミはピカピカしていて刃先がずいぶん短くて…悪いたとえですが、もんじゃ焼を食べるヘラくらいの長さしかありませんでした。
(なんということでしょう。写真撮るの忘れた!!汗)
「長く使って、その都度手入れをするとどんどん短くなっていくんだ」と。
長くよい家を建て続けてきたからこその、勲章のようなものだなと思いました。
工事は15分足らずで終了。これで新たな機械を置くことができます。
叔父さん、ありがとうございました。
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