「さて、いよいよおせちか」となると、おもむろに取り出すミシン。
裁縫が得意でもないのに、娘が進学・進級するときとこの時期しか出さない(恥)ミシンの仕事を始めます。
この日に備えて、使い古して破れたり薄くなったりしたおしぼりを取っておきます。これも例年通り。
半分に折って組み合わせて、あとはひたすら直線縫い!
テクニックは何にもいらないのですが、結構な厚みになるため普通のミシン針では折れてしまいます。
そして、これのポイントは、写真でもお分かりかと思いますが、とにかく「ぎっしり縫う」。
今日はおしぼり2枚で作ったものと3枚で作ったものと1枚ずつ作りましたが、縫い終わると、パンッパンに硬いものが出来上がります。
ほんとうはもう2枚作りたかったのですが、なんとミシン糸が底をつきました(苦笑)
とにかくぎっしり縫うので、ミシン糸の消耗も激しいのです。
さて、これはいったいなんでしょう???
正解は、「つかみ」。いわゆる、鍋つかみです。
これがないと、大きな鍋を動かしたりすることができません。
薄いと、熱さが伝わってしまうし燃えやすいため、業務用のコンロで大きな鍋を次々に使うときには全く役に立ちません。
…実は以前、お客様からかわいい鍋つかみをいただいたことがありました。
結構良いものだな、と思っていたのですが3日と持たず…
このくらいの頑丈さが必要というわけです。
そういえば、さかな家店主はお店を始める時から「つかみ、作って」と言っていました。
「業務用」というと、何でも専門的に作られたものがあるのに、これに関しては最初から手作り。
なんでかなあ…と改めて尋ねてみると、「修行していたところでは、おかみさん(板長さんの奥様)が作ってくれていた」と。
新品のカッチカチの「つかみ」を板長さんから「大事に使えよ」と渡されていたんだそう。
当時さかな家店主が担当していたのは煮方。
煮方とは、調理場で煮ることを受け持ち、ほとんどすべての料理の味をつける場所。
鍋を持つのに必要なつかみは、とっても大切な「相棒」なのです。
まっさらな新しいつかみは折れ曲がるのもやっとという感じですが、これからのおせちの仕込みの間でだんだん柔らかくなって手になじんできます。
その頃に、きっとおせちは完成しているはず(笑)
無事に、完成しますように…と願いを込める「つかみづくり」なのでした。
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