去る3月29日、地酒南郷を醸す矢澤酒造店さん主催の「南郷友の会」会員限定イベント「南郷列車」が開催されました。
今回で3回目。当店でこのイベントに合わせた特別お弁当をご用意させていただくのも3度目です。
1回目の様子はこちら
2回目の様子はこちら
当日は毎度のことながら、そして例年以上に和気あいあいと楽しいひとときとなりました。


すべての料理を一品ずつ一緒に試食し、どのお酒と合うかペアリング案を出し合います。
しかしメインは、献立の内容や味付けについての批評。
試作品に、矢澤さんからも列車担当(笑)のGさんからも容赦ないコメントの嵐が続きます。
ダメ出しばかりかと言うとじつはそうでもなく、8割近くはとても良い評価をいただいている、(と思っている、いや思いたい)のですが…
「美味しいですね。美味しいですけど、『強いて言うなら』〇〇は必要ですかね?」
「これ、面白いですね。『強いて言うなら』もうひと味、何かあるといいですかね」
矢澤さんの「強いて言うなら」を聞くと店主がピリッとします(笑)
店主自身が迷いつつあえてコメントを貰うために用意する料理もあったりして、それについてディスカッションが活発にされているときはいいのですが、「いいんだけどもう一捻り」みたいなのを言われて頭を抱えるシーンも…(笑)
笑っていられるのは私が気楽な立場だからですが(笑)
試食会のコメント、反応を同じく試食会に参加した娘が逐一メモをとり、それをもとに店主が変更・微調整を加えて2度目の試食会に備えました。


矢澤さんも思わず「Good!」を出すくらいの仕上がりになり、店主もホッとして当日…を迎えればよかったのですが、その際にポロッと呟かれた一言に更にもう一捻り改善を加えることに。
それが、南郷の酒粕を使ったわさび漬け。



ゆっくり少しずつ楽しめる酒肴があと1つ2つ入っていれば、お酒と一緒に長くお弁当を楽しめるんじゃないかというコメント、店主もちょっと気になっていたらしく。
偶然お隣の茨城県大子町で本わさびを栽培されている方をご紹介いただき、南郷の酒粕と合わせ更に隠し味に季節限定の「生詰うらら」をほんの少し垂らして完成。
熟成の味わいというよりフレッシュな春の味を感じていただるような仕上がりになりました。
当日。
わずかに小雨そぼ降る東舘駅からスタートです。
車中の様子を色々写真に収めたいと思いつつ、結局お客様とお話させていただいたり自分たちもお酒と料理と車窓の風景を楽しんだりしていたため、自分たちで撮った車内の写真はなし。
毎回横浜より南郷列車に参加されている「こまむ亭」さんからご提供のお写真を何枚か。
(こまむ亭さんとそのお友達さんは、南郷列車だけでなく当店を始め矢祭の夜も毎回楽しんでいかれます。また、店主が料理人を目指す前アルバイトをしていた魚屋さんがあった場所の斜向かいに現在こまむ亭さんがあるのだそう。不思議な御縁です)



また、「ヒガシダテ待合室」さんが撮影してくださった動画で今回のお弁当をご紹介。

2025年春 南郷列車 献立(左上より)
・天然ぶり塩麹漬けのフライ
天然ぶり五色揚げレモン風味
・春野菜炊合せ
たけのこ 菜花 どんこ れんこん にんじん ごぼう 桜麩
かき時雨煮
・さわら蕗味噌焼き
豚ロース南郷酒粕味噌漬
うるい黄身酢 茗荷子
・たけのこ御飯 桜花
自家製寒干し鮭
・自家製刺身こんにゃく
香味ちりめん
梅かつお
・おから煮物
大子町産本わさびと南郷酒粕の自家製わさび漬け
鮫川うどきんぴら
豪華食材を使っているわけではありませんが、春の恵みをふんだんに使った心尽くしの料理。
地物食材として、郡内鮫川村のうどとうるい、お隣茨城県大子町の本わさび、矢祭産のふきのとうなどを使用。
また、矢澤さんより大分県の大変上質な冬菇をご提供いただきました。
こちらは、矢澤さんのご友人のつながりでいただいたものだそうです。
土地の縁と人の縁で集まった食材たちを使わせていただき、特別な日のお弁当に仕上げることができてとても光栄に思います。
献立表は私(おかみ)の担当。
店主が料理や献立に工夫をこらしていた分、私はここが毎年の頑張りどころなんです(笑)


左は昨年ご用意した献立表。
昨年は旅のガイドブックをイメージして、折本にしてご用意しました。
今年は、よりお酒と料理のペアリングを車内で楽しんでいただくべく頭を悩ませました。
折本にすると見た目は可愛らしいのですが、詰め込める内容に限界があり十分な内容を盛り込めない。
楽しんでいただくために…とイメージしたのは「地図」。





要は折り方と印刷の仕方を変えたのですが、地図を広げるように今回矢澤酒造店で用意されたお酒の特徴と、試食会の際にペアリングを試した際に見つけたそれぞれのお料理におすすめの銘柄を見やすくご案内する、まさに「地図」のような献立表になりました。
車内で飲み放題で振る舞われた3つの銘柄と、試飲ように振る舞われた3つの特別なお酒でそれぞれお楽しみいただけるように選んであるのもポイント。
実際に車内ではこの献立表を参考にペアリング体験を楽しんでくださっているお客様も大勢いらっしゃいました。
更に皆さん銘々に春の水郡線の車窓の風景とお弁当、南郷のお酒、その他それぞれに持参されたお料理やお酒を楽しんでいらっしゃいました。
矢祭や近隣町村の恵みである食材を中心に店主の心尽くしのお料理と、地酒である南郷を水郡線を走る列車の中で楽しめる特別なイベント、今回も大いに楽しんでいただけたようでホッとしています。
次回もあるのかな。その時もまたドキドキハラハラしながら準備することになるでしょう。
またこの1年、精進してその時に備えたいと思います。
ご参加いただいた南郷友の会会員の皆さん、ありがとうございました!
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