先日の昼下がり、さかな家店主がなにやらやっていました。
普段、大根の皮や葉を「もったいない」といってなかなか捨てないさかな家店主が、ほうれん草の葉の先だけを摘んで細かくすりつぶして水を加え、左のように鍋でグツグツ。
出てきたアクを一生懸命すくっています。
が、さかな家店主曰く「今日はこのアクが必要なんだ」と。
確かに普段とは違い、水を張ったボウルにざるを浮かべて更にその上にガーゼを広げたところにすくったアクを入れています。
「あんまりグツグツやっちゃうとだめなんだけど、でも沸いていないと使えないんだ」と火加減を微妙に調節しながら次々出てくるアクをすくってはガーゼの中に入れていました。
モコモコふわふわふわモコモコしたアクがボウル一杯に広がり、一方で鍋の中のほうれん草の青汁はなんとなく色も黒っぽくなってきてドロリンドロリンとしています。
この時点でいったい何が出来るか、さかな家店主が何をしようとしているかは全く不明。
いつもとアクの扱いが全く違う(当然いつもは捨てられる存在)のも、このときは意味不明でした。
「実は必要なのはアクじゃなくて、アクと一緒にすくえたこれなんだ」
ギューッとガーゼの水を絞ると、当然水分と一緒にアクは流れ出してしまい、なにやら緑色のものが。
実はこれ、さかな家店主曰く「緑の色素」(葉緑素?)です。
アクと一緒に浮かぶほど軽くて細かいこの色素を使うため、わざわざほうれん草の刃先だけを使ってグツグツ煮込んだのでした。
色素だけなので、ガーゼをギューッと絞っても滴り落ちる水が緑になりません。
和食の技なのだそうです。
ここまで来ると完全に料理じゃなくて工作の世界みたい(笑)
ほんの少し砂糖を加えて、パレットナイフでよく混ぜます。
これは、緑色が褪せないようにするため。甘みは全くありません。実は絹さやなどは大量に茹でて冷水にさらした後、ごく薄めの砂糖水につけて保存すると数日間は色が褪せずに使うことが出来ます。
これは「青寄せ」といって、料理に青味を着ける時に使うものだそう。
今回は木の芽味噌和えに足しました。
さかな家店主曰く、「全部を山椒でやろうと思うと、ちょっとやそっとの木の芽では間に合わない」とのこと。
今回は、初節句のお祝いの焼き物に。
初節句の宴席のお料理から、赤や緑の鮮やかな春の色合いが増えてきます。
さかな家の春は春節句のお料理から、かもしれません。
<初節句 焼き物> 銀かれい西京焼 筍木の芽味噌和え 赤カブの甘酢漬け 那須どり塩麹漬け 筍のソテー
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