今年も、無事におせちが終了しました。
毎年毎年、「今年は間に合うのか」なんていう心配との戦いとなるおせちの仕込み。
今年もどうにか間に合いました。
今年は例年以上に「地物」にこだわりました。にんじん、大根、蒟蒻芋、ゆず、里芋など、本当にたくさん。
これはこの夏からおすすめメニューに登場した「やまつりの恵み」が大きく影響していると思います。
ちょくちょく直売所(ダジャレではありませんよ)に顔を出し、今旬の野菜を手に入れるだけでなく、これからどのような野菜が出てくるか、誰が作る野菜が美味しいかなどたくさんのことを教えてもらっているから。
矢祭の恵みにあふれたおせち料理になったのではないのかなと思います。
それでは、今回のおせちのご紹介。
画像は小さいのですが、クリックすると拡大されますよ。
さかな家のおせち 三段重
《祝い肴と口取り》(左上より)
飛騨牛和風ロースト 五色なます柚子釜
在来種手製蒟蒻と筍の土佐煮 伊達巻
丹波黒豆紅白千代呂木 紅白蒲鉾 田作り
栗きんとん 数の子土佐漬け
いつもこちらに入れている、黒豆や田作り、数の子の祝い肴のほか、店主が真っ先に「これを今年の壱の重に入れたい」と決めたのは、実は在来種の蒟蒻芋から作ったこんにゃく料理でした。
古くから矢祭やその周辺はこんにゃくの里として知られていたのだそうですが、高度成長期に蒟蒻芋の価格が下落した際にこんにゃく栽培から離れた人が多く、現在生産農家として栽培している農家さんはいないのだそう。
しかし数年前よりわずかに残っていた在来種の蒟蒻芋を再び栽培しようと動き出した有志の方々がいらっしゃり、じっくり3年育てたものを分けていただいたところから店主のこんにゃく作り(栽培ではなく芋から蒟蒻に加工する方ですが)の挑戦が始まったのでした。
今回おせちのために作ったこんにゃくは、これまでに一人で作ったどれよりもいい状態で仕上がったそう。
おせち料理の顔ともいえる壱の重に蒟蒻?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうした熱い思いを持った方々とそれを受け止めた店主の思いがこもった一品と言えます。
《焼き物と酢の物》(左上より)
鶏レバーパテ 天然ぶり柚香焼き 蓮根はさみ揚げ
鰆西京焼 煮あわび 酢蓮 菊花蕪
干柿柚子巻とクリームチーズの博多
たたき牛蒡 酢〆鯛の赤蕪巻 栗渋皮煮
蟹きぬた巻 たこと蛇腹胡瓜の黄身酢かけ
いくら土佐醤油漬け ゆず蜂蜜寒天よせ
今年の弐の重は「和洋折衷」がテーマ。
とはいえ、和のテイストを残せるように苦労したようです。
鶏のレバーパテは、レバーの臭みを消しながらも深い味わいを残しつつ、しかしこってりしすぎないように。
干し柿の柚子巻は例年おかみの実家で作る干柿を使っているのですが、更にひと手間かけてクリームチーズとあわせて博多押しに。
洋風なテイストを混ぜながら、味も見た目にも和の雰囲気を損ねないように盛り付けにも工夫をしました。
また、例年使っている赤蕪は例年は菊花蕪にするのですが、「今年の赤蕪は固い」と聞いたので、料理を変更。
薄くスライスし甘酢に漬けたもので、酢〆にした鯛を巻きました。
真っ白で柔らかな鯛を淡いピンクに染まった赤蕪で巻き三つ葉で結ぶ作業は、小さな赤ちゃんを産着でくるむようなイメージです。
《煮物》(左上より枠内ごとに)
大和芋磯辺揚げ 鮭南蛮漬け 金柑蜜煮 穴子八幡巻
天然鮎昆布巻 活車海老旨煮 高野豆腐
飴かけ胡桃 くわい黄金煮 牛蒡 梅花人参 里芋
豆腐白玉の荏胡麻和え 裏白シイタケ含め煮
いか人参 合鴨ロース煮
絹さや 梅ふ 木の芽
今年一番苦労したのは、くわいです(笑)
小さな、本当に子供の指の先ほどの小さなくわいを一つ一つ六方に剥き、煮含めました。
参の重は他のお重と比べると比較的地味目(笑) でもその分、どのお重よりも手間暇がかかっています。
今回店主がどうしても使いたかった食材の二つ目「荏胡麻(えごま)」がこちらに。
荏胡麻は福島では「じゅうねん」、飛騨では「あぶらえ」と呼ばれ、昔から食べられてきた食材です。
それをどのようにおせちで使うか、随分頭を悩ませました。
最終的には白玉粉を豆腐と合わせて練って作ったお団子に絡めて。イメージは飛騨の「五平餅」から。
やわやわとして大豆の風味が残る白玉団子と荏胡麻のコクのある味わいがうまくマッチしたのではないかと思います。
さかな家のおせち 二段重
《祝い肴と口取り》(左上より)
飛騨牛和風ロースト 五色なます柚子釜
在来種手製蒟蒻と筍の土佐煮 伊達巻
丹波黒豆紅白千代呂木 紅白蒲鉾 田作り
栗きんとん 数の子土佐漬け
壱の重は三段重と同様。彩りに添えた南天の飾りは、今アルバイトに来てくれている高校生たちが作りました。
枝と実を合わせてホイルで巻く作業は、簡単なようで意外と難しいのです。
葉と実のバランスや全体の大きさなどをそろえて、とてもかわいらしく仕上がりました。
《焼き物と酢の物、煮物》(左上より)
鮭南蛮漬 いくら土佐漬 天然鮎昆布巻
金柑蜜煮 煮あわび 活車海老旨煮
裏白シイタケ含め煮 大和芋磯辺揚
さわら西京焼 酢〆鯛の赤蕪巻 たたき牛蒡
鶏レバーパテ 牛蒡 菊花蕪 たこと蛇腹胡瓜の黄身酢かけ
蓮根はさみ揚げ ゆず蜂蜜寒天よせ 蟹きぬた巻
栗渋皮煮 高野豆腐
梅花人参 梅ふ 絹さや 木の芽
二段重の二の重は、なるべく楽しい雰囲気になるよう、いろんなものを少しずつ詰め込むようにしています。
とはいえあんまりうるさくならないように、色合いや味のバランスを考えながら盛り込んでいます。
今年のお重の中で、店主が一番こだわったのは「酢の物」。
おせち料理は砂糖と酢を多用するので、例年酢の物は何種類も作るのですが、ことしは見た目にも味にもバラエティに富んだ酢の物が盛り込めたと申しておりました。
ちなみに黄身酢は卵黄とお砂糖と酢を湯煎にかけながら作ります。
油の入らないマヨネーズのようなのですが、空気が程よく入っていてふわふわとした美味しいお酢です。
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