本日(実は昨日も数個)お客様にお渡ししたおせちです。
今年は例年以上にハードでした。と言うのも、30日にいくつか試験的に発送してみたからです。
これまで30日の深夜遅く(いや31日の早朝と言った方がいい)までかかって仕込みをしていたので、すべての作業を最低でも1日繰り上げて終えなければいけないということと、おかげさまで今年は久しぶりに忘年会シーズンがほぼ毎日大忙しだったこともあり、仕込みにとる時間とスタッフの手がごく限られた中での作業でした。
もう一つは、この天気。
おせちのシーズンになると、関連する食材の値段が上がるのはごく当たり前のことでさほどびっくりはしないのですが、今年は急に寒くなったりずいぶん早い降雪(しかも大雪)があったりしたせいで、目が飛び出るほどの価格上昇がいくつも。
そんな中でも、毎日毎日コツコツと仕込みを続けた店主。
いや、身内ながらもよく頑張ったなあと思います。
おせちには、酢と砂糖をたくさん使います。
酢は保存性を高めるためでしょうし、砂糖はきっと昔貴重品だったからお正月のご馳走にはたくさん使ったのだろうという想像をするのですが、今年はどの料理もできるだけ素材の味を引き出せるよう控えめに味付けをしました。
また、これまでは「なるべく地元の物を」と言うことを考えながら献立を考えていました。
そのスタンスは変えていないのですが、今年はそれに加えて出会った人たちとのつながりを大切にした料理もいくつか加えてみました。
一つは、キビナゴ。長崎県五島の市場から直送してもらったものですが、「ふくしま手ぬぐい」がご縁となりお世話になっている方から送っていただいたもの。
一つは、鮎。矢祭在住の「釣り師」があちこちでつってきた鮎の中から、昆布巻きに最適な大きさの鮎を選り分けて使わせてくれました。
「地産池消」は確かに大切。それと同じくらい「縁は異なもの味なもの」だなと感じるおせちになったと思います。
それでは、一段ずつご紹介しましょう。
(画像はサムネイルですが、クリックすると拡大されます)
さかな家のおせち 三段重
《祝い肴と口取り》(左上より)
海老黄身寿司 サーモンと胡瓜の砧巻
五食なます柚子釜 たこ胡瓜
伊達巻 丹波黒豆紅白千代呂木
数の子土佐漬け 田作り 栗きんとん 紅白蒲鉾
例のごとく(笑)黒豆は誰にも触らせないさかな家店主。おかげさまで今回もしわなくふっくら煮上がりました。
柚子釜は矢祭産のもの。今年は裏年で例年ほど収穫量がない中、同じ大きさの柚子で揃えてくださった農家さんに感謝です。
栗きんとんは事前に作っておいた栗の甘露煮のおかげで栗の香り漂う仕上がりになりました。
《焼き物と酢の物》
さわら塩麹漬黄身焼 きびなご南蛮漬け
天然ブリ西京焼き 南瓜饅頭道明寺揚げ 酢蓮 金柑蜜煮
海老若菜焼 飛騨牛和風ロースト ゆず寒天寄せ
いくら土佐醤油漬け 干柿ゆず巻 いか人参
紅白菊花かぶ 梅麩 絹さや 木の芽
さかな家店主が一番頭を悩ませていたお重がこちら。いくつかの料理は何度か試作を重ねて仕上がりました。
写真ではいくらは冷凍した状態のまま写っていますが、こちらは、秋の頃仕込んだいくらをおせち用にパックに詰めて冷凍したもの。
自然解凍で美味しく食べられる、と言うだけでなくおせち全体の保冷剤としての働きもしてくれています。
福島の郷土食いか人参は、さかな家の味と言うよりは我が家の味。家庭ごとに違うと言われるイカ人参なので、ある意味で一番緊張する一品です。
《煮物》
栗渋皮煮 もろこし豆腐 鶏だんご照り煮 くるみ飴掛け
若鮎昆布巻 筍 那須どり八幡巻 活車海老炒り煮
こんにゃく 里芋 蓮根 椎茸 ごぼう くわい黄金煮
あわび酒蒸し 梅花人参 絹さや 木の芽
いつもの物と今年初の物と。
栗渋皮煮はいつものもの、ですが、今年は仕上げに自家製のアップルブランデーを回しかけ香りづけしました。
ブランデーを回しかけほんのり香りをつけるのは毎年やっているのですが、今年はリンゴのさわやかな香りも加わりいい感じです。
若鮎昆布巻は、大人の指の長さほどの鮎を使って作った昆布巻。「釣り師」のおかげで念願がかないました。
ただしひとつ間違いが…こちら「若鮎」と書いてありましたが、実は半分くらいは「子持ち鮎」。
全部子持ちではなかったので、「子持ち」と表記するのが心苦しくサイズ的に「若鮎」と表記しました。
あわびは今年もラインナップに。「あわびは高いから目立つところに盛り付けた方がいいんだろうけど、手間で言ったら蒸すだけだから、隅でいいんだ」とは店主の一言。
気持ちを、汲んでやって下さい(笑)
さかな家のおせち 二段重
三段重では少々多いな、と言う方向けの二段重。
盛り付けも少しずつです。できれば三段重に入れた全種類を盛り込みたいと言う店主の希望はあるのですが、スペースの関係で叶わず…
それでもバラエティ豊かな仕上がりになったと思います。
《祝い肴と口取り》(左上より)
海老黄身寿司 サーモンと胡瓜の砧巻
五食なます柚子釜 たこ胡瓜
伊達巻 丹波黒豆紅白千代呂木
数の子土佐漬け 田作り 栗きんとん 紅白蒲鉾
一の重は三段重と全く同じ。
ここにはほぼ唯一の「市販品」が入っています。「紅白蒲鉾」です。(もう一つは黒豆に乗っているチョロギ)
写真を見たお客さんの半分くらいが「このうちどれだけが手作りなの?」という質問をされます。
店主はそのたびにっこり笑い「かまぼこくらいです」と答えています。
派手さはないけれど手間暇は惜しまない。手作りの味が自慢、それが当店のおせちです。
《焼き物と酢の物 煮物》(順不同)
天然ぶり西京焼 飛騨牛和風ロースト 金柑蜜煮 きびなご南蛮漬
いくら土佐醤油漬 海老若菜焼 紅白菊花かぶ あわび酒蒸し
いか人参 酢蓮 若鮎昆布巻 鶏だんご照り煮 梅麩 栗渋皮煮
くわい黄金煮 里芋 蓮根 ごぼう 筍 こんにゃく 梅花人参
椎茸 絹さや 木の芽
お重一段に二段分のおいしさを詰め込みました。
梅花人参とくわい六方剥きは私(おかみ)の仕事。
剥きもの自体、年に一度しかやらないのですが、これがうまくできるかどうかに今年一年の仕事への向き合い方が表れると思ってやっています。梅花人参はずいぶん慣れて早く(それなりに)美しく剥けるようになりましたが、くわいの六角形はまだまだ。ただ、確実に去年よりうまくできた気がします。今年も一年頑張ったんだな、私(自画自賛・笑)
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