本当は「帰省してきました。 その2」を書こうと思ったのですが、
先日のお客様とのお話の中でちょっと心に残る話があったので。
とあるお客様とゆっくりお話をさせていただく機会がありました。
・・・お店が静かだったからなのですが(苦笑)
お客様は炭焼きのお話をしてくださいました。
縁あって矢祭に移住された方だそうで、
今住んでらっしゃるお宅には囲炉裏があるのだそうです。
「せっかくだから自分で炭が焼けないだろうか」と考えたその方は、
炭を自分で焼いて売っている、いわば炭焼き職人の方を訪ねたのだそうです。
訪ねていった先のその職人さんとは、80歳を越えるおじいさん。
書籍などで炭についてのいろいろを調べた上で訪問されたそうで、
「何度くらいでどのくらい焼くのですか?」など質問をされたそうですが、
おじいさんの答えは「適当」。
実際に焼くところを手伝いながら、いろいろ教えてもらうことに下のだそうですが、
おじいさんは日に3回ほど窯に行って面倒を見るだけ。
こんなのでちゃんとしたいい炭が出来るのかなと心配になったそのお客様は、
窯の内部の温度を測れる機器などを持参しさまざまなデータを記録してみたのだそうです。
結果を見て、びっくり。
おじいさんのしている仕事は、そのお客様が事前に調べていった書籍に書いてあった
温度・時間とほぼ同じだったそう。
「多分ね、あのおじいさんは自分の親とかに教えてもらったことを
いろいろ失敗を重ねながら、経験として炭焼きを身に着けたんだと思うんだよね。
だけど、すべてが理にかなっている。
窯の大きさも今の大きさだからこそ、日に3回程度の面倒見で炭が焼けるし、
あの大きさだから合間にいろいろな野良仕事が出来るんだよね。
今より窯が小さかったら、温度調整も難しいしすぐ焼けちゃうから
付きっ切りじゃなくちゃいけないし、今より大きかったらひとりで作業は難しい。
『腰を曲げての作業が大変だから、窯の天井を少し高くした』って言ってたけど、
それだっておじいさん曰く『適当』なんだけど、ちゃんと理にかなってる。
あれで30歳前後のお弟子さんがいれば、いい炭焼き職人が育つんだけどなあ」
そんな話から、そのお客様は続けました。
「あのさ、仕事なんてのは広げたり大きくしなくていいんだよ。
大切なのは、『つなげていく』こと。
昔の人が順番に積み上げてきた技みたいなものを、
次につなげていくことが何より大切なことなんだから」
魚の目利き、刺身の切り方、煮物の煮方、盛り付けの仕方、新しい料理の開発だって
先人の知恵・技があってこそのもの。
なんとも深いなあ、と思って伺った次第です。
先日、休み前に聞いた講演会(『地域で支えあう”食と農”(講演者:結城登美雄先生)』)の
時にも、そのときは農がメインの話でしたが「次の担い手を生み出せる仕組みづくりを」
という話題があったので余計胸に響きました。
お店自体は7年目に突入したところですが、そう考えると私たちのしている仕事も
昔から脈々と受け継がれたものなんだなあ・・・と悠久の時に思いをはせるのでした。
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