昔の手仕事。

本日お出しした、蒸し寿司。南郷普通酒と一緒に。

忘年会からおせち、そして年が明けてお正月の忙しさから冬休みを過ごして、ようやくさかな家に本格的な冬が訪れたような感じがします。

冬になると登場するのが、蒸し寿司。
おせちが終わったあと恒例、「使った食材の始末」。
おせち料理は見栄えを気にするので、もともとの食材の大きさに関わらず同じ大きさに揃えて切ったり剥いたりします。そうするとどうしても大量に出るのが、まだ食べられる部分の食材の半端。捨てるのはもったいないので、切れ端は切れ端で皮をむいたりして下処理をしておき、新たな料理に使っています。
その時に一番よく作るのが、ちらし寿司や蒸し寿司に使える具材。おせちは酢で味付けする料理や、通常より少し甘味を付けた料理などが多いので、お寿司の具にするのは見栄えもいいのでよくやります。

この日の具材は伊達巻の半端を刻んだもの、酢蓮、あらかじめ作っておいたでんぶ。

ちらし寿司はもちろんですが、当店でよく作るのは蒸し寿司。
京都では冬の定番料理だそうで、私(おかみ)は祖母から母に伝わる家庭料理としてなじみがあるのですが、店主にとっては以前は未知なる料理だったそう。
実家の母から、蒸し寿司用のせいろを譲り受けてからは時々作るのですが、いかんせん数が少ないので限られた数のお客様にしかお出しできず、ある意味では非常にレアな料理と言えます。…大げさか(笑)

 

 

中華せいろ用の枠を鍋につけて、その上に蒸し寿司用の枠を置き、せいろを乗せています。

ヒノキで作られているせいろに具材を混ぜた酢飯を盛り付け、その上にでんぶや錦糸卵(上の画像では伊達巻を使用しています)、酢バスやかんぴょうなど加熱調理した具材を盛りつけて蒸していきます。
それぞれの具材の中に閉じ込められた旨味が、蒸気で再び広がるのか、具材と酢飯の味が混然一体となります。
おまけに蒸したことによってヒノキの香りも加わり、立ち上がる湯気から美味しい。おなかの中までふんわりあったかくなって、冬の寒い時期にはぴったりの料理なのです。

 

お店には中華せいろもありますが、いろいろ微妙に違っていておもしろいなぁと思っていました。
例えば底面は、中華せいろは割とざっくり大きめな隙間が空いていて蒸気が通りやすくなっています。が、こちらは平たく切った竹で底面が作られていて、その隙間はごくわずか。和せいろでは底面にすだれを敷くものもあるそうですが、これはもともとこのような造りになっています。

実家の母に尋ねたところ、母方の祖母が料理屋を営んでいた祖母の弟の店に手伝いに行ったときに見つけ、その後指物師の方(どうやら金子さんというらしい)に作っていただいたものだそう。
具体的にいつ、というのはわかりませんが少なくとも50年近く前に作られたものだと思われます。

恥ずかしながら「指物師」という言葉も、小説の中だけでしか見たことがなかった私。昭和30年代後半から40年前半に作られたこの蒸し寿司用せいろが、今てもとにあり、ほとんど汚れることなく今に残っていることがありがたいなあと思います。

同時に、毎年使っていただろうこのせいろから、いまだにヒノキのいい香りが漂うことに驚き。これからも大事に使っていこうと思います。

というわけで、こちらのせいろは数がごくわずかしかありません。なかなかお客様にお出しできないのですが…このせいろを見ていただきたくてブログにしました。8年も前

そうそう、もう8年も前になりますが、いまだにお声がけいただく民報サロン執筆の折、この蒸し寿司について取り上げました。そちらもよければご覧くださいね。
民報サロン第6回が掲載された
sakanaya-maruyasu.com/blog/hitorigoto/3682/