【やまつり再発見】「佐川商店」蒟蒻製粉工場見学。 その2


【やまつり再発見】「佐川商店」蒟蒻製粉工場見学。 その1 からの続きです。

乾燥場から運ばれたこんにゃくの荒粉(あらこ)。
道路を挟んで南側の製粉所に入った時、機械の姿に目を奪われました。

(大きな音が出ます。ご注意ください)

ものすごい音と、粉のせいでしょうか、真っ白な機械と窓から差し込む光の美しさ。
カタンカタンと動いているのは、杵。
その下に一つ一つ釜と呼ばれる臼があり、そこで荒粉をついて粉にしていきます。

「荒粉を朝、釜に入れていきます。大体釜いっぱい入れてちょうどいいくらい。
それを13時間くらいかけて粉にしていきます。」

13時間!気の長くなるような作業を、この子たちは…(完全に擬人化している・笑)

→実はここ、私お話を聞き間違えていました!
13時間ではなく、なんと23時間でした!!
佐川さんによると、こんにゃくの主成分である「マンナン」は水を吸うと柔らかくなるけれど、乾燥状態では砂より硬いそう。
不純物が混ざらないように極限まで粉にしようと思うと、23時間から23時間半かかるのだそうです。
13時間でもびっくりだったのに、23時間…恐ろしく気が遠くなるような仕事ですね。

釜の内部は、中央が盛り上がっていて、杵で突くたびに中の荒粉に滞留が生まれるようになっているそうです。
全国にこんにゃく製粉工場は何か所もあるのだそうですが、今は近隣にお住いの皆さんに迷惑にならないよう、大きな音が出る杵と臼でつく機械は姿を消し荒粉を粉砕して製粉する方法が主流だそう。
「今となっては、全国でもこの機械を使って製粉しているところは、ほとんどないんじゃないかなあ」と奥さん。
例えに出していいかわかりませんが、以前訪れたことのある群馬県の富岡製糸場に通ずるものを感じてしまいました。
勝手に、矢祭町の文化遺産として認定したいほどです。
ただ、こうして丁寧に突いて製粉したものの方が粘りが出るとか、上質といわれるそうで、こだわりのある「練り屋さん(いわゆる「こんにゃく」の製造工場)」からご指名で注文が入るのだそうです。


緑川さんが粉を取り出して触らせてくれました。
きめの細かい粉…ですが、中に少し粒が残っている感じがします。
見た目にわからないけれど、触るとわかる。

「これを、ここから磨いていきます」

磨く、といっても一粒一粒磨くわけでは当然、なく(当たり前だ・笑)。
ここから、製品になるまで合計3回ふるいにかけ、きめをそろえるだけでなく一切の不純物を取り除いていくそう。

最後のふるいをかけたら、計量しながら二重になった袋に詰めてミシン掛けして完成。

こうして、ようやくこんにゃく粉の完成です。

一番驚いたのは、最初こそ水の中をぐるぐる回って洗浄されるこんにゃく芋ですが、そこから一切芋そのものに手をつけず…つまり、何かに浸したり晒したりすることなく粉になるということ。
「粉合わせは玉合わせ(生芋をすりおろしてこんにゃくを作る方法)より風味が落ちる」などと聞くので、てっきり何かしらしているのかと思いきや。
作業工程は実にシンプル。昔ながらのそのまんまの作り方です。
まあ、敢えて違いを挙げるとするなら、玉合わせはこんにゃく芋の良いところも悪いところも全部を使ってこんにゃくに仕上げていきますが、こんにゃく粉は何度もふるいをかけて「磨き上げた」分、雑味がなく精製されたこんにゃくに仕上がる、ということでしょうか。
例えるなら、玉合わせは黒砂糖、粉を合わせたものはグラニュー糖、といったイメージ。
黒砂糖、グラニュー糖にそれぞれ特徴があり、使う料理によってそれぞれを選ぶように、こんにゃく作りも用途に応じて玉と粉を使い分けるのもありだなと思いました。

もう一つは、「循環」。
工場に入らせていただいたとき、「こんにゃくは全く無駄がないんです」と奥さんが教えてくださいました。
例えば、これ。

「これはね、スライスしたときに出た「ノリ(こんにゃく芋から出る粘りのもの)」が乾燥したものです。
これはこれで取っておいて、荒粉とは別に製粉します。
こんにゃく芋は捨てるところがないんです。皮や小さい芋、運搬中にどうしても出る少し傷んだ芋も、それぞれに製粉して、ランクを落とした粉として使えます。」
確かに、見学している工程の中で選別して別にしてあったもの(先ほどのノリが乾燥したものなど)はあったけれど、取り除いて廃棄するものはありませんでした。

「それだけじゃありませんよ。製粉の時、臼の中で舞い上がる細かい粉があります。それをまき散らさないように空気ごと集めて『飛び粉』にします」
確かに、機械は粉で白くなっていましたが、工場内の空気は澄んでいました。
なるほど~

「食べられるものだけではないんです。生芋についていた土でさえ、無駄にしませんよ」
と、奥さん。


奥さんが見せてくださったのは、工場の外の土の山。
よく見ると、こんにゃく芋から外れたらしい芽やひげ根のようなものが混ざっています。
「これは、芋がコンベヤーで運ばれて最初の工程、回転するかごの中で落とされた土です。一輪車に積んで外に運んでいます。
ここに積んでおいて、ご近所の方や知っている人たちに畑やプランターの土として自由に持って行ってもらい、使ってもらっています。」
とのこと。
昨年は近くのやまつりこども園の畑にもこの土を使ってもらったそう。
おかげで、昨年はサツマイモが大豊作だったそうです。
それに、工場の周りに割いている花々。
いつもきれいだなあ、見事だなあと思いながら通り過ぎていたのですが、そちらにもここの土を使っているそうです。
一緒に工場見学に行った、地域おこし協力隊の青樹さんも
「ここから土をもらって、今年の夏はまちの駅でゴーヤをたくさん収穫するぞ!」と意気込んでいました。

また、

これは、井戸水と一緒に芋を回転させ洗浄し終わったところ。
よく見ると、芋はベルトコンベヤーで運ばれ、泥水は下に落ちています。
この泥水は?

外に堆積層があります。ここに泥水が流れてきて、泥を沈殿させます。
堆積層に流れてくるまでに退席した土は先ほどの土の山へ。
きれいになった水はそのまま久慈川へ。

「この泥も無駄にはしません。従業員さんの田んぼに入れてもらっています。
危険防止のためフェンスを張っていることもあって、掻き出すときは結構大変なのですが、それでも泥水の状態で久慈川には流せないので」

最新機器がそろう、時代の最先端を行くというような設備では、正直ありません。
それでも、細部にまで心を配り、収穫されたこんにゃく芋を大事に大事に粉にして、土までも無駄にしないということにちょっと感激してしまいました。

昔は矢祭周辺は「こんにゃくの里」と呼ばれ、こんにゃく農家さんがたくさんいらしたそうです。
でも、時代の流れとともに、こんにゃく芋の価格が下がり次第に農家さんが減っていきました。
佐川商店さんのようなこんにゃく製粉工場も、かつては町内に何か所もあったそう。
店主が知る限り、内川区や真木野区、宝坂区にあったそうですが、現在は矢祭町内では佐川商店さんだけが残って製粉を続けているそうです。

「ただね、今矢祭でも在来種の栽培を始めたり、こんにゃく芋栽培に再注目しているでしょう?
こんにゃくの里だからね、そういうのは嬉しいね。」

今年も、たくさん自家製こんにゃくを作った店主。
更に強い思いをもって、矢祭のこんにゃくをアピールしていきたいと思ったようです。

佐川商店さん、お忙しい中お邪魔したにもかかわらず、工場を見学させていただきありがとうございました!
まさに「矢祭の魅力再発見!」のひとときとなりました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました