生姜の長い旅。

こちら、夏に作ったカツオの漬け丼です。
特製漬けダレにカツオを漬け込んだものを、酢飯に盛り上からたっぷりの薬味を。
薬味は、みょうが、万能ねぎ、みょうが竹、新生姜、大葉を細かくたたいたもの。
この薬味はいろいろに使えて、こうやってカツオの漬けの上に盛りつけたり、
アジの細切りと和えて「薬味たっぷりアジたたき」に使ったり、いわしやアジのなめろうの時は身と一緒にこの薬味をよくたたいて仕上げたりしています。
そのため、夏場はいつもたっぷり常備しています。

この薬味を仕込むとき、店主は新生姜の皮を厚く剥きます。
皮に近い部分はどうしてもスジっぽくなってしまうため、使うと薬味の一体感が損なわれるからだそう。

厚く剥いた皮は、そのまま捨てずに袋に入れて冷凍庫に保管します。
毎回毎回、この薬味を作る時には、必ず。
生姜の長い旅は、皮をむいたところから始まります。
大きな袋にいっぱいになるまで、剥くたびにためていくのですが、これはその後のお楽しみのため。

冷凍庫で眠らせておいた生姜の皮に大量の砂糖をかけ、丁寧に混ぜていきます。
しばらくすると生姜が解凍し始め、砂糖が絡んでしっとりしてきます。

そしたらそこから、一晩放置。
生姜が完全に常温に戻ってたっぷりの生姜エキスがしみだしています。
大体砂糖が解け切っていたら、水と様々なスパイスを加えて一緒に煮ていきます。

「生姜シロップ」づくりです。
十分に煮だして、生姜のエキスが十分に出たら完成。
このシロップは後でレモンとソーダと合わせて「自家製スパイシージンジャーエール」になったり、お湯で割って「ホットレモンジンジャー」になります。
たっぷり作って、来年の夏にはかき氷のシロップにも。
こちら、完全オリジナルレシピです!…と言えれば格好がいいのですが、実は数年前購入した、糸井重里さんのジンジャーシロップの本で作り方を覚えました。
店主が気に入ってからというもの、少しずつアレンジして作っています。
元のレシピは、当然生姜全部を使っています。
皮だけ使う、というのは珍しいかもしれませんが、「皮に近い部分が香りが強くて、薬効成分もたっぷりあるらしいから」と店主(笑)。

夏場、当店にやってきた生姜は、夏場は薬味として、そして秋には皮を煮だして美味しいシロップとして楽しめるようになりました。

 

 

・・・これで、終わりじゃないですよ(笑)
生姜のたびはまだまだ続きます。

十分に煮だした、生姜の皮。コトコト煮ることで繊維がほぐれ柔らかくなっています。
サルでシロップと分け、シロップを完全に切ったら、今度は盆ざるにこの出し殻というような生姜の皮を並べます。
風に当てて数日。
煮るときにたっぷりの砂糖をしみこませているので、乾いてくると表面が少しずつ白く硬くなってきます。
砂糖が乾いて硬い膜を作っているという感じ。
また、十分に乾かしても、砂糖の保水力のせいかカチカチにはなりません。

これに、今度はグラニュー糖をまぶしておくと、もっと水分が抜けて「生姜糖」の完成。

こちらは、焼き魚の添えとして使うことができるし、時にはこれだけでお出しするとよい箸休めになるようです。
口に入れるとすっきりした甘さを感じ、一口噛むと中から生姜のピリリとした刺激が口いっぱいに広がります。

生姜の皮はスジっぽいというのですが、十分に煮だしているとスジスジを感じないし、むしろ少し歯ごたえがある感じがアクセントでいいんです。

生姜の長い旅はここで終わり。最後の最後まで楽しませてくれる生姜です。

夏場の生姜はこんな感じ。
これから、やまつりの恵みである甚右衛門さんの生姜がやってくるようになると、またちょっとずつ皮を集めて、たくさんたまったらシロップを作って…というサイクルが始まります。
生姜の季節は1年中続くのでした。

 

 

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